厨房の人手不足を解消するには? 5つの対応方法と進める際のポイントについて解説
病院や介護施設の厨房では、慢性的な人手不足が大きな課題となっています。中には「求人を出しても応募が集まらない」「現在のスタッフの負担が大きく、離職が心配」と悩んでいる方もいるのではないでしょうか。
人手不足を放置すると、スタッフへの負担だけではなく、給食の品質や施設の運営にも影響を及ぼす可能性があります。
そこで本記事では、厨房で人手不足が生じる原因や現場に与える影響、人手不足への対応方法、対策を進める際に確認したいポイントについて解説します。
【この記事で分かること】
● 厨房の人手不足は、業務効率化や働きやすい環境づくりを組み合わせて対応することが重要である
● 調理に関する業務だけではなく、発注や検品などの管理業務も見直すことで現場全体の負担軽減につながる
● 施設の人員体制や運営方法に合った対策を選ぶことが、安定した運営を続けるポイント
厨房における人手不足の現状
厨房の人手不足は、個々の施設だけではなく、社会全体で深刻化している課題です。まずは、人手不足が進んでいる背景について確認していきましょう。
医療・介護分野を中心に給食の需要が高まっている
高齢化社会の進行により、医療機関や介護施設を利用する人は増え続けています。それに伴って、毎日提供する給食の数も増加しているのです。
結果として厨房で対応する業務も増えており、人員の確保がより重要になっています。しかし、給食の需要拡大に対して十分な人材を確保できない施設も多く、人手不足が課題となっているのが現状です。
調理スタッフの人材確保が難しい状況が続いている
厨房では、調理スタッフの人材確保が難しい状況が続いています。飲食物調理従事者や介護サービス職業従事者は有効求人倍率が高く、求職者が職場を選びやすい売り手市場となっているためです。
このような状況では、施設同士で人材を確保する競争が激しくなります。求人を出しても応募が集まりにくく、採用活動を続けても必要な人数を確保できないケースも少なくありません。その結果、限られたスタッフで厨房を運営せざるを得ない施設が増えています。
厨房で人手不足が生じる主な原因
厨房の人手不足は、社会全体の人材不足だけが原因ではありません。厨房ならではの勤務環境や業務内容も大きく影響しています。
ここでは、厨房で人手不足が生じやすい主な原因について確認していきましょう。
勤務時間が不規則になりやすい
厨房では、朝食・昼食・夕食を決まった時間に提供する必要があります。そのため、早朝や夜間を含めた勤務体制となりやすく、一般的な日勤中心の職場とは働き方が異なります。時間帯によっては公共交通機関が運行しておらず、通勤できる人が限られる場合もあるでしょう。
このような勤務条件は、子育て世代や若年層にとって働くハードルとなることがあります。その結果、求人を出しても応募が集まりにくく、人材確保が難しい状況につながっています。
大量調理による身体的な負担が大きい
厨房では、一度に多くの食事を調理するため、身体的な負担が大きくなりやすいです。限られた時間内で大量調理を行うことから、体力を要する作業が多く発生します。
例えば、重い鍋や食材を運んだり、長時間立ったまま調理や配膳を行ったりする場面も少なくありません。このような作業が日常的に続くと、体への負担が蓄積しやすくなります。
また身体的な負担が大きい職場では、離職につながるケースもあります。人材が定着しにくくなると、厨房の人手不足がさらに続きやすくなるでしょう。
調理スタッフの高齢化や業務の属人化が進んでいる
厨房では、ベテランスタッフの高齢化が進む一方で、若手人材の確保が難しい状況が続いています。そのため、長年培われた知識や技術を十分に引き継げないケースもみられます。
また調理方法や味付け、発注業務などが特定のスタッフへ集中しやすい点も課題です。人手不足により教育へ十分な時間を確保できず、業務の詳細が共有されないまま運営する場合もあるでしょう。その結果、新しく入職したスタッフの教育が進みにくく、人材育成に時間がかかることで、人手不足が続きやすくなっています。
食材費や物流コストの高騰が負担となっている
食材費や物流コストの上昇により、厨房の運営にかかる負担は年々大きくなっています。限られた予算の中で運営を続ける必要があるため、施設全体で予算配分を見直さなければならない場面も増えているでしょう。
そのような状況では、人件費や採用活動、処遇改善へ十分な投資を行うことが難しくなりがちです。人員を増やしたくても採用を進められず、必要な人材を確保できないケースも少なくありません。
厨房の人手不足がもたらす主な影響
厨房の人手不足を放置すると、スタッフへの負担だけではなく、給食の品質や施設運営にも影響が及ぶ可能性があります。さまざまな課題が連鎖的に発生する前に、想定される影響を把握しておくことが大切です。
ここでは、人手不足によって生じやすい主な影響について解説します。
調理スタッフ一人ひとりの負担が大きくなりやすい
人手不足になると、一人当たりが担当する業務量は増加します。少ない人数で給食を提供しなければならず、長時間労働や残業が常態化しやすくなるためです。
このような状況が続くと、疲労が蓄積し、体調不良やモチベーションの低下につながる可能性があります。また業務負担が一部のスタッフへ集中すると、離職を招く恐れもあるでしょう。
さらに、人材が減ると残ったスタッフの負担は一層大きくなります。このような悪循環に陥ると、人手不足がさらに深刻化する「負の連鎖」が生じる可能性があるので注意が必要です。
食事の品質や提供体制への影響が懸念される
人手不足が続くと、食事の品質や安定した提供体制にも影響を及ぼす可能性があります。業務負担が増え、長時間労働が続くことで、集中力を維持しにくくなるためです。
人間の集中力には限界があり、疲労が蓄積すると、思わぬミスが起こりやすくなります。また日々の給食を提供する中で、品質を維持するための時間や余力を確保しにくくなる場合もあるでしょう。このような状況が続くと、給食サービス全体の品質低下につながる恐れがあります。
施設運営にかかるコストの増加につながることがある
人手不足は、施設運営にかかるコストの増加につながることがあります。人員不足を補うために派遣スタッフを活用すると、人件費や採用費などの追加コストが発生するからです。
また必要な人員を確保できないことにより、給食を提供する体制を維持できない場合は、新規利用者の受け入れを制限せざるを得ないケースもあります。受け入れ制限が続くと、施設の売上低下につながる可能性もあるでしょう。
このように、人件費や採用コストの増加、受け入れ制限などが重なると、施設の経営へ影響が及ぶことがあります。
厨房の人手不足に対応する主な方法
厨房の人手不足は、人員を増やすことだけで解決できるとは限りません。業務の効率化や働きやすい環境づくりを進めれば、限られた人数でも運営しやすい体制を整えられる可能性もあります。
ここでは、実践しやすい主な対応方法を5つ紹介します。
仕入れ先を一本化して管理業務を効率化する
食材の仕入れ先を見直し、発注窓口を一本化するのも有効な方法です。発注や納品、検品、請求管理などをまとめることで、日々の管理業務を効率化しやすくなります。
食材ごとに異なる業者とやり取りしている場合は、納品対応や検品、請求書の確認などが繰り返し発生します。仕入れ先を集約すれば、管理する取引先が減るため、厨房スタッフだけではなく事務・管理担当者の負担軽減も期待できるでしょう。業務全体を効率化すれば、限られた人員でも運営を進めやすい体制の構築につながるはずです。
献立作成やメニュー考案を外部に相談する
献立作成やメニュー考案を外部へ相談できる体制を整えることも、厨房での業務負担の軽減につながります。献立は継続的な見直しや調整が必要であり、日々の業務と並行しての対応は大きな負担となるためです。
例えば、季節ごとのメニューや行事食の考案、利用者の状態に合わせた介護食の調整を相談できれば、献立作成にかかる時間を削減できます。またメニューのマンネリ化も防げるでしょう。
調理機器を活用して作業負担を軽減する
業務用自動調理機や調理ロボットを活用することも、人手不足への対応方法の一つです。仕込みや加熱作業などを機械が担えば、スタッフの作業負担を軽減しやすくなります。
例えば、自動で火加減の調整や攪拌(かくはん)を行う機器を導入すれば、重い鍋を扱う作業などの身体的な負担を減らすことが可能です。また人が担う作業を一部機械化すると、限られた人数でも業務を進めやすくなります。
調理経験が浅いスタッフでも均一な品質を維持しやすくなるため、味のばらつきを抑える効果も期待できます。
完全調理品を取り入れて調理の手間を省く
完全調理品を活用し、施設では再加熱と盛り付けを中心に行う運用へ切り替える方法も有効です。厨房での調理工程を減らすことで、人手不足による負担を軽減しやすくなります。
外部の工場で事前調理された完全調理品を活用すれば、早朝からの仕込み作業を減らせます。また、きざみ食やミキサー食などの介護食に対応した商品を取り入れれば、個別調理にかかる手間も抑えやすくなるでしょう。調理時間を短縮できるため、限られた人数でも安定した給食の提供を行いやすい体制につながります。
働きやすい職場づくりを進める
職場に定着してもらうためには、働きやすい職場づくりを進めることも重要です。例えば、女性や高齢者、外国人労働者など、多様な人材が働きやすいよう、柔軟な勤務形態や休暇制度を整える方法があります。
採用と育成を一体化した育成型採用を取り入れることで、人材が定着しやすい環境を整えられ、継続的な人材確保につながるでしょう。
厨房の人手不足への対策を進める際に確認すべきポイント
人手不足への対策は、施設の運営体制や予算に合った方法かどうかを事前に確認することが大切です。ここでは、人手不足への対策を進める際に確認しておきたいポイントを紹介します。
初期費用と運用コストを比較する
人手不足への対策を進める際は、初期費用だけではなく、継続的に発生する運用コストまで含めて検討しましょう。導入時の費用だけで判断するのではなく、無理なく運用を続けられるかどうかを確認する必要があります。
例えば、調理ロボットは初期投資が必要になるものの、導入後は仕込みや加熱作業の負担軽減が期待できます。また既存の湯煎鍋や電子レンジで始められる完全調理品を取り入れれば、新たな設備投資にかかる費用を抑えられるでしょう。調理工程を簡略化できるため、日々の運用負担を軽減しながら継続して活用しやすい方法です。
このように、対策によって導入時にかかる費用や導入後に得られる効果は異なります。初期費用と運用面のバランスを踏まえ、施設に合った方法を選びましょう。
施設の人員体制に合った方法を選ぶ
人手不足への対策を検討する際は、施設の人員体制でも無理なく運営できる方法かどうかを確認することが重要です。
特に、特定のベテランスタッフへ業務が集中しない体制を整えることが大切です。誰でも一定の手順で作業できる「再現性」のある仕組みであれば、経験の浅いスタッフやパートタイム従業員が中心の現場でも、品質を維持しやすくなります。
給食の品質や提供体制を維持できるかを確認する
人手不足への対策では、業務を効率化するだけではなく、給食の品質や提供体制を維持できるかどうかも確認する必要があります。
例えば、利用者に適した介護食への対応や栄養バランスを維持できるかを確認しましょう。またHACCP(食品の衛生管理手法)に基づいた衛生管理を継続できることも欠かせません。
対策を導入した後も「安全でおいしい食事を安定して提供できる体制を維持できるか」という視点で検討しましょう。
人手不足への対策を進め、安定した運営につなげよう
厨房の人手不足を解消するためには、労働環境の改善だけではなく、業務効率化や完全調理品の活用など、複数の方法を組み合わせて進めることが重要です。施設の状況に合わせた対策を取り入れれば、限られた人員でも安定した運営につながります。
また調理に関する業務だけではなく、発注・納品・検品・請求管理などの管理業務全体を効率化することも欠かせません。全体の業務負担を見直すと、スタッフの負担軽減と継続的な運営の両立を図りやすくなるでしょう。
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【参考URL】
https://www.narikoma-group.co.jp/article/work-resource-cookchill
https://inrevo.co.jp/hitotore-recruit/column/02_hospital_chubou-hitodebusoku
https://www.narikoma-group.co.jp/article/work-long-working
https://kodawari-chef.com/kswp/blog/11371/
https://www.hattorikogyo.com/blog/column/a317
https://inrevo.co.jp/hitotore-recruit/column/02_hospital_chubou-hitodebusoku
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