老人ホームの人手不足はなぜ起こる? 原因や対策に取り組む際のポイントを解説

老人ホームでは「求人を出してもなかなか採用につながらない」「採用コストや人件費ばかりが増えている」といった人材確保の悩みを抱える施設も少なくありません。慢性的な人手不足が続けば、既存の職員に業務が集中し、現場の負担が大きくなります。
人手不足に対応するには、採用を強化するだけではなく、原因を整理した上で施設に合った対策を進める必要があります。
そこで本記事では、老人ホームにおける人手不足の現状や主な原因、具体的な対策について解説します。対策を進める際に確認したいポイントも紹介するので、ぜひ参考にしてください。
【この記事で分かること】
- 高齢化による介護需要の増加と働き手の減少により、人材を確保しにくい状況が続いている
- 採用手法の見直しの他、業務の効率化や多様な人材の活用も人手不足対策になる
- 給食に関する対応などの業務を見直すことで、限られた人員でも業務を進めやすくなる
目次
- 老人ホームにおける人手不足の現状
- 高齢化による介護需要の増加
- 少子化による労働人口の減少
- 介護事業者の経営環境の悪化
- 老人ホームで人手不足が生じる3つの原因
- 他の職種と比べて給与や待遇に差がある
- 身体的・精神的な負担が大きい
- 介護職に対するマイナスイメージがある
- 老人ホームの人手不足を軽減するための対策
- 採用手法を見直す
- 外国人スタッフなど多様な人材を活用する
- 作業手順を見直して業務を効率化する
- ICTツールや介護ロボットを活用する
- 資格取得を支援して職員の定着やスキルアップにつなげる
- 給食に関する業務の外部サービスを活用する
- 人手不足対策を進める際に確認すべきポイント
- 職員の理解を得ながら取り組みを進める
- サービスの質や入居者の安全に配慮する
- 現場の負担を軽減し、人手不足に対応できる老人ホームを目指そう
老人ホームにおける人手不足の現状
老人ホームを含む介護現場では、人手不足が大きな課題となっています。ここでは、3つの側面から現状を見ていきましょう。
高齢化による介護需要の増加
高齢化が進む日本では、介護サービスを必要とする人が増えています。2024年10月1日時点の高齢化率は29.3%で、65歳以上の人口は3,624万人です。介護を必要とする人が増えれば、老人ホームなどで必要となる介護職員の人数も増えるでしょう。
また要介護・要支援認定者数は、2040年に988万人でピークを迎えると推計されており、介護サービスのさらなる需要拡大が見込まれています。
少子化による労働人口の減少
介護需要が増える一方で、介護の担い手となる世代は減少しています。日本の生産年齢人口(15~64歳)は1995年の8,716万人をピークに、2024年には7,373万人まで減少しました。
また介護分野は、他の職種と比べても人材を確保しにくい状況です。厚生労働省によると、2025年3月の介護関係職種の有効求人倍率は3.97倍と全職業の1.16倍を大きく上回っており、求職者に対して多くの求人がある状態です。
そのため、1人の求職者を複数の事業者が採用しようとする形になりやすく、求人を出しても人材を確保できない傾向にあります。
介護事業者の経営環境の悪化
人手不足は、採用上の問題だけではなく、老人ホームの経営にも影響を及ぼします。必要な職員を確保できず、新規入居者の受け入れを制限すれば、施設の稼働率が低下し、介護報酬などの収入が減少する可能性があるでしょう。
一方、急な欠員を補うために派遣職員や人材紹介会社を利用すると、人件費や採用にかかる費用が増えやすくなります。また収入が減る中で人材確保のコストが増えれば、施設の経営負担はさらに大きくなります。
実際に、2025年の介護事業者の倒産は176件、休廃業・解散は653件となり、いずれも過去最多となりました。人手不足が長期化すると、施設の運営や事業継続にも影響するため、早い段階から対策を検討することが大切です。
老人ホームで人手不足が生じる3つの原因
老人ホームの人手不足には、人材確保の難しさだけではなく、職員が定着しにくい点も関係しています。ここでは、人手不足につながる3つの原因を見ていきましょう。
他の職種と比べて給与や待遇に差がある
介護職は、他の産業と比べて給与水準が低い傾向にあります。仕事の内容や責任の大きさに対して待遇が見合わないと感じられる場合、求職者から就職先として選ばれにくくなるでしょう。また現在働いている職員が、より条件の良い職種に転職することも考えられます。
また介護サービスの収入は、介護報酬の影響を受けます。施設によっては、人件費を大幅に引き上げることが難しい場合もあるでしょう。採用条件を改善しにくい状況も、人材の確保や定着を妨げ、人手不足につながる一因です。
身体的・精神的な負担が大きい
介護職では、夜勤や交代制勤務による不規則な生活や、移乗介助、入浴介助など、体に負担がかかる業務が日常的に発生します。また利用者や家族への対応によって精神的な負担が生じる場合もあります。
このような負担が重なると、働き続けるのが難しくなり、離職につながる場合もあるでしょう。職員が離職すれば、残った職員に業務が集中しやすくなります。一人当たりの負担が増えることで疲労やストレスが蓄積し、さらに離職につながる可能性もあるでしょう。このような悪循環が、人手不足を長期化させる一因となります。
介護職に対するマイナスイメージがある
介護職には「仕事がきつい」「給与が低い」といったマイナスイメージを持たれることがあります。こうした印象が先行すると、求職者が応募をためらう要因になるでしょう。特に介護業界で働いた経験がない人には、実際の仕事内容や職場の環境が伝わりにくい場合があります。
また介護職ならではのやりがいや働き方などの魅力が、十分に伝わっていないことも考えられます。実際の働き方を知る機会が少なければ、既存のイメージだけで就職先を判断されやすくなるでしょう。結果として、応募者の確保が難しくなり、人手不足につながる可能性があります。
老人ホームの人手不足を軽減するための対策
老人ホームの人手不足を軽減するには、人材の確保だけではなく、既存職員の負担を減らす視点も必要です。施設の人員体制や業務内容に合わせて対策を組み合わせましょう。
ここでは、以下の対策について詳しく解説します。
- 採用手法を見直す
- 外国人スタッフなど多様な人材を活用する
- 作業手順を見直して業務を効率化する
- ICTツールや介護ロボットを活用する
- 資格取得を支援して職員の定着やスキルアップにつなげる
- 給食に関する業務の外部サービスを活用する
採用手法を見直す
人材を確保するためには、特定の採用手法だけに頼らず、複数の方法を使い分けるのがポイントです。ハローワークの他、求人サイトや人材紹介、人材派遣なども選択肢となります。募集する職種や必要な人材、採用時期に合わせて使い分ければ、求職者との接点を増やしやすくなるでしょう。
例えば、急な欠員を補いたい場合には、人材派遣の活用を検討できます。一方、長期雇用を見据えるのであれば、派遣期間を経て直接雇用を検討できる紹介予定派遣も選択肢の一つです。採用の目的を整理した上で、それぞれに合った方法を検討しましょう。
外国人スタッフなど多様な人材を活用する
外国人スタッフをはじめ、多様な人材を活用することも人手不足への対策になります。外国人の他、シニアや子育て中の人などが働ける環境を整えれば、採用対象となる人材の幅を広げやすくなるでしょう。
その際は、短時間勤務や担当する業務を限定した働き方など、状況に合わせた勤務形態を取り入れることが大切です。フルタイム勤務が難しい人材も活用できれば、限られた人員でも業務を分担しやすくなります。
作業手順を見直して業務を効率化する
新たな人材を確保するだけではなく、現在の作業手順を見直して業務を効率化することも重要です。まずは日々の業務を洗い出し、重複している作業や必要以上に時間がかかっている工程がないかを確認しましょう。業務の優先順位や役割分担を整理すれば、職員一人当たりの負担軽減につながります。
また業務ごとに必要な人数を見直すことも欠かせません。一人で対応できる業務と複数人での対応が必要な業務を整理すれば、限られた職員を必要な場面に優先して配置しやすくなります。業務ごとに適切な人数を配置できれば、少ない人数でも業務を進めやすい体制が整うでしょう。
ICTツールや介護ロボットを活用する
ICTツールや介護ロボットを活用し、職員の業務負担を軽減する方法もあります。
ICTツールとは、情報通信技術を活用して業務を効率化するためのシステムや機器のことです。例えば、介護記録や職員間の情報共有をデジタル化すれば、手書きや転記などの事務作業を減らせます。記録にかかる時間を短縮できれば、介護職員が利用者へのケアに時間を充てやすくなるでしょう。
また移乗などの身体介助を補助する介護ロボットを取り入れれば、職員の体にかかる負担を抑えやすくなるでしょう。業務負担を補助する手段として、活用することがポイントです。
資格取得を支援して職員の定着やスキルアップにつなげる
現在働いている職員が成長しやすい環境を整えるのも、人手不足への対策になります。介護に関する資格の取得費用や研修への参加を支援すれば、職員が知識や技術を身に付ける機会を設けられるでしょう。成長を実感できる環境は、仕事への意欲や職場への定着につながる可能性があります。
また資格取得を支援するだけではなく、資格取得後の役割やキャリアパスを明確にすることも大切です。身に付けた能力やこれまでの経験を実際の業務で生かせれば、将来の働き方も描きやすくなります。新たな人材の採用と併せて、既存職員が働き続けやすい体制も整えましょう。
給食に関する業務の外部サービスを活用する
老人ホームでは、給食に関する業務を見直すことで、厨房の人手不足が軽減される可能性があります。献立作成や調理などを外部サービスに委託すれば、施設内で担う業務を減らせます。人員を十分に確保できない場合でも、食事を提供しやすい体制を整えられるでしょう。
また施設内の調理工程を減らす方法として、完全調理品やクックチルの活用が挙げられます。完全調理品は、加熱や盛り付けなどの簡単な工程で提供できるため、仕込みや調理に必要な作業量を抑えやすい点が特徴です。クックチルは、外部で調理・急速冷却された料理を、老人ホームで再加熱して提供する方法です。施設内で一から調理する工程を減らせるため、職員の負担軽減につながるでしょう。
給食に関する業務のどこまでを外部に任せるかによって、施設内で対応する作業や必要な人員は異なります。現在の業務内容や人員体制を整理し、負担を軽減しやすい方法を検討するとよいでしょう。
人手不足対策を進める際に確認すべきポイント
人手不足への対策は、業務の効率化だけを優先して進めるものではありません。現場の職員や入居者への影響も考慮する必要があります。
ここでは、人手不足対策を進める際に確認したい2つのポイントを解説します。
職員の理解を得ながら取り組みを進める
新しい制度やツールを導入する際は、職員の理解を得ながら進めることが大切です。まずは導入する目的や、これまでの業務がどのように変わるのかを事前に共有しましょう。
十分な説明がないまま進めると、新しい業務への不安や反発が生じる可能性があります。その結果、人手不足を軽減するための取り組みが、かえって働きにくさにつながることも考えられます。
導入時は現場の意見や業務上の課題を確認し、無理のない範囲で進めましょう。また導入後も職員の声を確認し、必要に応じて運用方法を見直すことが重要です。
サービスの質や入居者の安全に配慮する
人員配置や業務内容を見直す際は、サービスの質や入居者の安全に影響が出ないかどうかを確認することも欠かせません。人手不足への対策では、単に作業時間や人員を減らすのではなく、必要なケアを維持しながら負担を軽減する視点が必要です。
例えば、効率化を優先するあまり、入居者に必要な見守りや介助の時間まで減らさないよう注意しましょう。一度業務を見直した後も、入居者へのケアや安全管理に問題が生じていないかを定期的に確認する必要があります。
現場の負担を軽減し、人手不足に対応できる老人ホームを目指そう
老人ホームの人手不足に対応するには、採用手法の見直しや多様な人材の活用など、施設の状況に合わせた対策が必要です。新たな人材を確保するだけではなく、既存の職員が担う業務負担を軽減する視点も持ちましょう。
例えば給食に関する業務には、献立作成や食材の仕入れ、調理など多くの工程があります。外部サービスを活用してこれらの業務を見直せば、厨房スタッフの作業量を減らし、限られた人員でも食事を提供しやすい体制を整えられるでしょう。
株式会社ニッカネでは、施設内の調理工程の削減が期待できる完全調理品やクックチルを取り扱っています。肉・魚・野菜などの通常食材に加え、ソフト食やきざみ食などの介護食も取り扱っているため、老人ホームで必要となる幅広い食材をまとめて仕入れられる点が特徴です。人手不足をきっかけに調理工程や食材の仕入れ方法を見直したい方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。